起業の仕方は?株式会社や個人事業主別の費用や具体的な設立のやり方など紹介

起業の仕方 起業

起業を検討している方の中で、形態や手続き方法、事前・事後にやるべきことなど曖昧な方もいるでしょう。

本記事では、そもそも起業とは何か?具体的な起業方法の流れ、必要なものや資金などを解説します。

失敗しないためのポイントや注意点もまとめているためぜひ参考にしてください。

起業とは?わかりやすく解説

起業とは、新しいビジネスや事業を自ら立ち上げることです。株式会社や個人事業主などの形態があります。社会や市場の課題を解決する新しい商品やサービスを提供し、収益を得る活動ともいえるでしょう。

起業の特徴は、主に「新しい価値の創出」「自主性と責任」「利益の追求」の3点に集約されます。

起業家は自由な発想で事業を展開できる一方、その成功や失敗の責任を自ら負う必要があります。また、事業活動を通じて利益を追求しながら、雇用創出や地域活性化などの社会的貢献を果たす役割も。

起業の種類には、急成長を目指す革新的な事業を展開する「スタートアップ」、地域密着型の小規模事業である「スモールビジネス」、社会課題の解決を目的とした「ソーシャルビジネス」、そして自分のスキルや知識を活かして独立する「フリーランス・個人事業主」などが挙げられます。

事業規模や目的に応じて異なり、起業家は自身の目標や状況に合った形態を選択するようにしましょう。

起業の仕方は?5つのステップや必要なもの

起業するにあたっての流れを以下で紹介します。

なぜ起業したいのか?目的を明確にする

起業の最初のステップは、「なぜ起業するのか」を明確にすることです。

目的がはっきりしていないと、途中で迷ったりモチベーションを失ったりするリスクがあります。具体的な目的は、事業の方向性や取り組む事業分野を決定する基盤となります。

目的を明確にするポイントは、自己分析を行い自分が得意なことや情熱を持てる分野は何かを考えましょう。

また、社会で解決したい問題「不便」「不足」とされていることを洗い出します。起業を通じて得たいものを明確にし、目指すゴールの設定を行いましょう。

取り組む事業を決め、事業計画を作る

次に、具体的にどのような事業を行うかを決め、それを形にする事業計画を作成します。事業計画は、起業の青写真であり、資金調達や運営方針を決定する際の指針となります。

事業計画は、市場調査でターゲット顧客や競合、需要を把握し、次に提供する価値を明確化して顧客に届けるべき内容を定義します。その後収益モデルを構築して利益を上げる仕組みを設計。最後に運営計画を策定して事業の運営体制やスケジュールを整えるという流れで作成します。

事業計画を作成するには、市場調査データを活用して顧客ニーズや競合情報を正確に把握し、事業の方向性を明確にすることが重要です。

また、ビジネスプランテンプレートを使用することで、収益計画や運営計画を体系的かつ効率的に整理できます。

さらに、市場調査が初めての場合は、専門家のアドバイスを受けることで、より精度の高い分析と実現可能な計画の立案ができるでしょう。

起業時の会社形態を決める

事業の規模や目的に応じて、会社の形態を選択します。主な選択肢には以下のようなものがあります。

・個人事業主:設立が簡単でコストが低いが、責任が無限。
・合同会社(LLC):設立費用が比較的安く、運営もシンプル。
・株式会社:信頼性が高く、資金調達がしやすいが、設立費用が高め。

初期費用の有無や責任の範囲(有限責任か無限責任か)、長期的な事業の拡大計画などを考慮して選択するとよいでしょう。

また、税理士や行政書士へ相談し最適な選択をするためのアドバイスをもらうのもひとつの手です。

起業に必要な資金を準備する

起業には、事務所開設費、商品開発費、人件費など、多くの初期費用が必要です。事業計画を基に、必要な資金を具体的に算出し、調達方法を決定します。

主な資金調達の方法は以下のとおりです。

・自己資金:自分の貯金や家族からの支援。
・銀行融資:日本政策金融公庫などの公的融資制度を活用。
・投資家からの出資:ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家の活用。
・クラウドファンディング:インターネットを通じて資金を募る。

資金調達のためには、銀行や金融機関に提出する融資申請書類が必要であり、資金の必要性や返済計画を具体的に説明する必要があります。

また、投資家や支援者に事業の魅力や将来性を効果的に伝えるために、わかりやすく整理されたプレゼン資料が欠かせません。これらの書類を通じて、事業の信頼性と実現可能性を示すことが求められます。

起業手続きを行いはじめる

会社形態が決まったら、実際に起業のための手続きを行います。法人の場合、法務局への登記手続きが必要で、場合によっては許認可申請も必要になります。

起業手続きの主な流れは以下のとおりです。

①会社の名前と所在地を決定:法人登記に必要な情報。
②定款の作成と認証:株式会社や合同会社の場合、定款を作成し、公証人役場で認証を受けます。
③法務局での登記申請:必要書類を揃えて登記します。
④税務署への届け出:起業後1ヶ月以内に開業届を提出します。

事業を正式に開始するためには、定款で会社の基本ルールや運営方針を明文化し、印鑑証明書で代表者や出資者の本人確認を行う必要があります。

さらに、飲食業など特定の業種では許認可証明書が求められるため、事前に必要な手続きを確認し、取得することが重要です。

ちなみに、個人事業主の場合は、税務署に「開業届」を提出するだけで設立可能。

起業した後にやるべきこと

・税務署への届出を行う
事業を開始したら、税務署への届出を速やかに行う必要があります。個人事業主の場合は「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出。

また、青色申告を希望する場合は「青色申告承認申請書」を提出します。法人の場合は「法人設立届出書」を始め、必要な書類を揃えて提出する必要があります。

・社会保険関係の手続きをする
従業員を雇用したり法人を設立したりした場合、健康保険や厚生年金保険、労働保険(雇用保険や労災保険)への加入が必要です。

「健康保険・厚生年金保険の新規適用届」や「労働保険適用事業報告書」を提出し、年金事務所や労働基準監督署で手続きを行います。これにより、従業員の福利厚生が整い、法令遵守を果たせます。

・銀行口座を開設する
事業専用の銀行口座を開設し、事業資金と個人資金を明確に分けることは、資金管理を効率化する上で重要です。

法人の場合、登記簿謄本や印鑑証明書を用意し、法人名義の口座を開設します。個人事業主の場合でも、プライベート用と事業用の口座を分けることで、収支の管理がしやすくなります。

・創業融資に申込む
起業時には、必要な資金を確保するために創業融資を申請することがあります。日本政策金融公庫や信用保証協会を活用するのが一般的です。

申請時には事業計画書や資金計画書、税務署の届出書類などを提出。また、申請面談では事業内容を具体的かつ説得力のある形で説明することが求められます。

・従業員を雇用する
事業拡大や運営効率化のために従業員を採用した場合、適切な雇用手続きが必要です。まず、雇用契約書を作成・締結し、労働保険(雇用保険・労災保険)の加入手続きを行います。

さらに、給与計算や源泉徴収の準備を整え、従業員が働きやすい環境を整備。従業員の採用は、事業運営を円滑に進めるための重要なステップです。

・集客を開始する
事業を軌道に乗せるためには、商品やサービスを顧客に認知してもらい、購入や利用につなげる集客活動が必要です。

ホームページやSNSを活用して情報を発信するほか、広告やキャンペーンを実施して潜在顧客へのアプローチを行います。また、名刺やパンフレットを作成し、対面での営業活動を通じて新規顧客を獲得することも重要です。

起業にかかる費用は?

項目個人事業主株式会社合同会社
設立費用0円~数万円20万円~30万円6万円~10万円
信頼性低い高い中程度
資金調達のしやすさ難しいしやすいしやすい(株式発行不可)
運営費用10万円~数十万円50万円~数百万円30万円~数百万円

個人事業主

個人事業主は、設立費用が最も少なく、手続きが簡単なのが特徴です。税務署への開業届の提出は無料で行えるため、初期費用を抑えたい方に向いています。

ただし、事業用の印鑑作成や名刺・パンフレットなど、必要に応じて準備するものが発生します。また、事業に必要な道具や広告費など、運営にかかる費用は別途考慮が必要です。

・設立費用の目安:0円~数万円
・主な内訳:印鑑作成費用(1,000~5,000円)、名刺や広告費(数千円~数万円)
・運営費用の目安:10万円~数十万円(事務所や設備投資がある場合、さらに増加)

株式会社

株式会社は信頼性が高く、資金調達がしやすい形態ですが、設立費用が高めです。特に定款の認証や登記にかかる費用が発生します。

設立費用として最低20万円以上は必要ですが、事業の拡大や投資家からの資金調達を視野に入れる場合に適しています。また、法人運営には社会保険への加入が必須となり、運営コストも個人事業主に比べて高くなります。

・設立費用の目安:20万円~30万円
・主な内訳:定款認証費用(5万円)、登録免許税(15万円)、印鑑作成費用(5,000~1万円程度)
・運営費用の目安:50万円~数百万円(オフィス賃貸費、社会保険料、マーケティング費用など)

合同会社

合同会社は、設立費用が株式会社よりも安く、運営もシンプルなのが特徴です。定款の認証が不要であるため、その分費用を抑えることができます。

信頼性や運営の自由度も高いため、コストを抑えつつ法人化を目指したい方に最適。運営費用は株式会社よりやや低めですが、商品開発や設備投資によって変動します。

・設立費用の目安:6万円~10万円
・主な内訳:登録免許税(6万円)、印鑑作成費用(5,000~1万円程度)
・運営費用の目安:30万円~数百万円(設備投資、マーケティング費用など)

起業する際に活用できる資金調達方法

起業時に活用できる資金調達方法を以下にまとめました。

エンジェル投資家・ベンチャーキャピタル(VC)からの出資

エンジェル投資家やVCは、成長が期待できる事業に対して資金を提供する投資家や企業です。

資金提供と引き換えに、株式の一部を譲渡することが一般的です。特に高成長を目指すスタートアップ向けで、資金だけでなくビジネスのアドバイスやネットワークの提供を受けられる場合もあります。

自己資金

自分の貯蓄や資産を元手に起業する方法です。

最もシンプルで借入や返済の必要がないため、事業運営の自由度が高いのが特徴。

資金が不足しがちなため、小規模な事業に向いています。

補助金や助成金を利用する

国や自治体が提供する補助金や助成金を活用する方法です。

返済の必要がない点が魅力で、設備投資や雇用促進に関連する制度が多いです。

申請には要件があり、審査を通過する必要があります。

政府系金融機関の融資を申請する

日本政策金融公庫などの政府系金融機関が提供する創業融資を利用する方法です。

低金利かつ長期返済が可能で、初期費用をカバーしたい起業家に向いています。事業計画書の提出が必要で、面談で事業の妥当性を説明する必要があります。

クラウドファンディングを利用する

インターネットを通じて、不特定多数の人から資金を募る方法です。

アイデアやプロジェクトに共感した支援者が資金を提供してくれるため、商品の事前販売や認知度向上も期待できます。リターン型や寄付型など、さまざまな形式があります。

知人や親戚から借りる

信頼関係を基に、知人や親戚から直接資金を借りる方法です。返済条件が柔軟であることが多いですが、トラブルを防ぐため、口約束ではなく借用書を作成することが望ましいです。

起業・開業に活用できる資金調達方法5つ!各特徴や注意点を紹介

起業の注意点。失敗しないために気をつけるべきポイント

これらのポイントを意識することで、起業時のリスクを軽減し、成功への道を確実に進めることができます。

・利益の出るビジネスモデルを考える
事業の収益構造を明確にし、利益を生み出す仕組みを設計することが重要です。市場調査を行い、顧客ニーズや競合との差別化を具体化しましょう。

・自己資金を確認する
起業に必要な初期費用や運転資金を自己資金でどこまで賄えるか確認し、資金不足によるリスクを軽減します。

・資金調達先を確認する
自己資金だけで足りない場合、融資や出資などの調達先を事前に確保しておき、資金繰りの計画を立てます。

・仕事やお客さんを確保する
事業を開始する前に、最初の顧客や案件を確保し、安定した収益の見込みを立てることが重要です。SNSや知人ネットワークを活用するのも有効です。

・仕入れ先を確保する
商品の品質やコストに直結するため、信頼できる仕入れ先を見つけ、安定的に供給を受けられる体制を整えます。

・人材・コアメンバーを確保する
事業運営をサポートするスキルや経験を持った人材を確保し、チームを構築します。特にコアメンバーは、事業の成長に大きく影響します。

・広告宣伝の手法を考える
自社のターゲット顧客に適した広告手法を選び、効率よく認知度を上げる計画を立てます。SNS、Web広告、チラシなどが選択肢です。

・税金関連の知識を身に着けておく
所得税、法人税、消費税など、事業に関する税務知識を把握し、納税スケジュールや控除の仕組みを理解しておくことが重要です。

・法関連の知識を身に着けておく
労働基準法や契約書作成に関する知識を身に着け、法律トラブルを防ぎます。必要に応じて専門家に相談する体制を整えましょう。

まとめ

起業とは、新しい価値を創出し、商品やサービスを提供して利益を追求する活動です。

株式会社や合同会社、個人事業主など形態は多様で、それぞれに特徴とメリットがあります。成功には、目的の明確化、利益を生むビジネスモデルの構築、適切な会社形態の選択、十分な資金の準備が必要です。

資金調達には自己資金、融資、補助金、クラウドファンディングなどが活用でき、各方法の特徴を理解して計画的に進めることが大切です。設立後は税務や社会保険の手続き、顧客や仕入れ先の確保、広告戦略の実行が不可欠。

また、税務や法務の知識を身に付け、リスクを回避することも重要です。これらを意識し、入念な準備を行うことで、安定した起業の成功へとつなげましょう。